キッチン《厨房》日文版吉本芭娜娜资料Word文件下载.docx
- 文档编号:13611599
- 上传时间:2022-10-12
- 格式:DOCX
- 页数:28
- 大小:37.36KB
キッチン《厨房》日文版吉本芭娜娜资料Word文件下载.docx
《キッチン《厨房》日文版吉本芭娜娜资料Word文件下载.docx》由会员分享,可在线阅读,更多相关《キッチン《厨房》日文版吉本芭娜娜资料Word文件下载.docx(28页珍藏版)》请在冰豆网上搜索。
私は、桜井みかげの両親は、そろって若死(わかじ)にしている。
そこで祖父母が私を育ててくれた。
中学校へあがる頃、祖父が死んだ。
そして祖母と二人でずっとやってきたのだ。
先日、なんと祖母が死んでしまった。
びっくりした。
家族という、確かにあったものが年月の中で一人一人減っていって、自分がひとりここにいるのだと、ふと思い出すと目の前にあるものがすべて、うそに見えてくる。
生まれ育った部屋で、こんなにちゃんと時間が過ぎて、私だけがいるなんて、驚きだ。
まるでSFだ。
宇宙の闇だ。
葬式がすんでから三日は、ぼうっとしていた。
涙があんまり出ない飽和(ほうわ)した悲しみにともなう、柔らかな眠けをそっとひきずっていって、しんと光る台所にふとんを敷いた。
ライナスのように毛布にくるまって眠る。
冷蔵庫のぶーんという音が、私を孤独な思考から守った。
そこでは、結構安らかに長い夜が行き、朝が来てくれた。
ただ星の下で眠りたかった。
朝の光で目覚めたかった。
それ以外のことは、すべてただ淡々(たんたん)と過ぎていった。
しかし!
そうしてばかりもいられなかった。
現実はすごい。
祖母がいくらお金をきちんと残してくれたとはいえ、ひとりで住むにはその部屋は広すぎて、高すぎて、私は部屋を探さねばならなかった。
仕方なく、アパ×
×
情報を買ってきてめくってみたが、こんなに並ぶたくさんの同じようなお部屋たちを見ていたら、くらくらしてしまった。
引越しは手間だ。
パワーだ。
私は、元気がないし、日夜(にちや)台所で寝ていたら体のふしぶしが痛くて、このどうでもよく思える頭をしゃんとさせて、家を見にいくなんて!
荷物を運ぶなんて!
電話を引くなんて!
と、いくらでもあげられる面倒を思いついては絶望してごろごろ寝ていたら、奇蹟がボタもちのようにたずねてきたその午後、私はよくおぼえている。
ピンポンとふいにドアチャイムが鳴った。
薄曇りの春の午後だった。
私は、アパ×
情報を横目で見るのにすっかり飽きて、どうせ引っ越すならと雑誌をヒモでしばる作業に専念していた。
あわてて半分寝まきみたいな姿で走り出て、なにも考えずにドアのカギをはずしてドアを開いた。
(強盗でなくてよかった)そこには田辺雄一が立っていた。
「先日はどうも」
と私は言った。
葬式の手伝いをたくさんしてくれた、一つ年下のよい青年だった。
聞けば同じ大学の学生だという。
今は私は大学を休んでいた。
「いいえ。
」彼は言った。
「住む所、決りましたか?
」
「まだ全然。
私は笑った。
「やっぱり」
「上がってお茶でもどうですか?
「いえ。
今、出かける途中で急ぎですから。
」彼は笑った。
「伝えるだけちょっと、と思って、母親と相談したんだけど、しばらくうちに来ませんか。
「え?
私は言った。
「とにかく今晩、七時ごろ家に来てください。
これ、地図。
「はあ。
」私はぼんやりそのメモを受け取る。
「じゃ、よろしく。
みかげさんが来てくれるのをぼくも母も楽しみにしてるから。
彼は笑った。
あんまり晴れやかに笑うので見慣れた玄関に立つその人の、瞳がぐんと近く見えて、目が離せなかった。
ふいに名を呼ばれたせいもあると思う。
「…じゃ、とにかくうかがいます。
悪く言えば、魔がさしたというのでしょう。
しかし、彼の態度はとても“クール”だったので、私は信じることができた。
目の前の闇には、魔がさす時いつもそうなように一本道が見えた。
白く光って確かそうに見えて、私はそう答えた。
彼は、じゃ後で、と言って笑って出て行った。
私は祖母の葬式まで殆ど彼を知らなかった。
葬式の日、突然田辺雄一がやってきた時、本気で祖母の愛人だったのかと思った。
焼香(しょうこう)しながら彼は、泣きはらした瞳を閉じて手をふるわせ、祖母の遺影を見ると、またぽろぽろと涙をこぼした。
私はそれを見ていたら、自分の祖母への愛がこの人よりも少ないのでは、と思わず考えてしまった。
そのくらい彼は悲しそうに見えた。
そして、ハンカチで顔を押さえながら、
「なにか手伝わせてください。
と言うので、その後、いろいろ手伝ってもらったのだ。
田辺、雄一。
その名を、祖母からいつ聞いたのかと思い出すのにかなりかかったから、混乱していたのだろう。
彼は祖母の行きつけの花屋でアルバイトをしていた人だった。
いい子がいて、田辺くんがねえ、今日もね…というようなことを何度も耳にした記憶があった。
切花(きりばな)が好きだった祖母は、いつも台所に花を絶やさなかったので、週に二回くらいは花屋に通っていた。
そういえば、一度彼は大きな鉢植えを抱えて祖母のうしろを歩いて家に来たこともあった気がした。
彼は、長い手足を持った、きれいな顔だちの青年だった。
素性(すじょう)はなにも知らなかったが、よく、ものすごく熱心に花屋で働いているのを見かけた気もする。
ほんの少し知った後でも彼のその、どうしてか、“冷たい”印象は変らなかった。
ふるまいや口調(くちょう)がどんなにやさしくても彼は、ひとりで生きている感じがした。
つまり彼はその程度の知り合いにすぎない。
赤の他人だったのだ。
夜は雨だった。
しとしとと、あたたかい雨が街を包む煙った春の夜を、地図を持って歩いていった。
田辺家のあるそのマンションは、うちからちょうど中央公園をはさんだ反対側にあった。
夜の緑の匂いでむせかえるようだった。
ぬれて光る小路(こみち)が虹色に映る中を、ぱしゃぱしゃ歩いていった。
私は、正直言って、呼ばれたから田辺家に向かっていただけだった。
なーんにも、考えてはいなかったのだ。
その高くそびえるマンションを見上げたら、彼の部屋がある十階はとても高くて、きっと夜景がきれいに見えるんだろうなと私は思った。
エレベーターを降り、廊下に響き渡る足音を気にしながらドアチャイムを押すと雄一がいきなりドアを開けて、
「いらっしゃい。
と言った。
おじゃまします、と上がったそこは、実に妙な部屋だった。
まず、台所へ続く居間にどかんとある巨大なソファに目がいった。
その広い台所の食器棚を背にして、テーブルを置くでもなく、じゅうたんを敷くでもなくそれはあった。
ベージュの布張りで、CMに出てきそうな、家族みんなですわってTVを観そうな、横に日本で飼えないくらい大きな犬がいそうな、本当に立派なソファだった。
ベランダが見える大きな窓の前には、まるでジャングルのようにたくさんの植物群が鉢やらプランターやらに植(う)わって並んでいて、家中よく見ると花だらけだった。
いたるところにある様々な花びんに季節の花々が飾られていた。
「母親は今、店をちょっと抜けてくるそうだから、よかったら家の中でも見てて。
案内しようか?
どこで判断するタイプ?
お茶を淹れながら雄一が言った。
「なにを?
私がその柔らかいソファに坐って言うと、
「家と住人(じゅうにん)の好みを。
トイレ見るとわかるとか、よく言うでしょ。
彼は淡々と笑いながら、落ち着いて話す人だった。
「台所。
「じゃ、ここだ。
なんでも見てよ。
彼は言った。
私は、彼がお茶を淹れているうしろへまわり込んで台所をよく見た。
板張りの床に敷かれた感じのいいマット、雄一のはいているスリッパの質のよさ――必要最小限のよく使い込まれた台所用品がきちんと並んでかかっている。
シルバーストーンのフライパンと、ドイツ製皮むきはうちにもあった。
横着(おうちゃく)な祖母が、楽してするする皮がむけると喜んだものだ。
小さな蛍光灯に照らされて、しんと出番を待つ食器類、光るグラス。
ちょっと見ると全くバラバラでも、妙に品のいいものばかりだった。
特別に作るもののための…たとえばどんぶりとか、グラタン皿とか、巨大な皿とか、ふたつきのビールジョッキとかがあるのも、なんだかよかった。
小さな冷蔵庫も雄一がいいと言うので、開けてみたら、きちんと整っていて、入れっぱなしのものがなかった。
うんうんうなずきながら、見てまわった。
いい台所だった。
私は、この台所をひと目でとても愛した。
ソファに戻ってすわると、熱いお茶が出た。
ほとんど初めての家で、今まであまり会ったことのない人と向かい合っていたら、なんだかすごく天涯孤独な気持ちになった。
雨に覆われた夜景がやみににじんでゆく大きなガラス、に映る自分と目が合う。
世の中に、この私に近い血の者はいないし、どこへ行ってなにをするのも可能だなんてとても豪快だった。
こんなに世界がぐんと広くて、闇はこんなにも暗くて、その果てしない面白さと淋しさに私は最初初めてこの手でこの目で触れたのだ。
今まで、片目をつぶって世の中を見てたんだわ、と私は、思う。
「どうして、私を呼んだんでしたっけ?
私はたずねた。
「困ってると思って。
」親切に目を細めて彼は言った。
「おばあちゃんには本当にかわいがってもらったし、このとおりうちには無駄なスペースが結構あるから。
あそこ、出なきゃいけないんでしょう?
もう。
「ええ、今は大家の好意に立ちのきを引き伸ばしてもらってたの。
「だから、使ってもらおうと。
と彼は当然のことのように言った。
彼のそういう態度が決してひどくあたたかくも冷たくもないことは、今の私をとてもあたためるように思えた。
なぜだか、泣けるくらいに心にしみるものがあった。
そうして、ドアがガチャガチャと開いて、ものすごい美人が息せききって走りこんできたのは、そのときだった。
私はびっくりして目を見開いてしまった。
かなり歳は上そうだったが、その人は本当に美しかった。
日常にはちょっとありえない服装と濃い化粧で、私は彼女のおつとめが夜のものだとすぐに理解した。
「桜井みかげさんだよ。
と雄一が私を紹介した。
彼女ははあはあ息をつきながら少しかすれた声で、
「初めまして。
」と笑った。
「雄一の母です。
えり子と申します。
これが母?
という響き以上に私は目が離せなかった。
肩までのさらさらの髪、切れ長の瞳の深い輝き、形のよい唇、すっと高い鼻すじ――そして、その全体からかもしだされる生命力のゆれみたいな鮮やかな光――人間じゃないみたいだった。
こんな人見たことない。
私はぶしつけなまでにじろじろ見つめながら、
とほほえみ返すのがやっとだった。
「明日からよろしくね。
」と彼女は私にやさしく言うと雄一に向き直り「ごめんね、雄一。
全然抜けらんないのよ。
トイレ行くって言ってダッシュしてきたのよ。
今。
朝なら時間とれるから、みかげさんには泊まってもらってね。
」とせかせか言い、赤いド
- 配套讲稿:
如PPT文件的首页显示word图标,表示该PPT已包含配套word讲稿。双击word图标可打开word文档。
- 特殊限制:
部分文档作品中含有的国旗、国徽等图片,仅作为作品整体效果示例展示,禁止商用。设计者仅对作品中独创性部分享有著作权。
- 关 键 词:
- 厨房 日文版 芭娜娜 资料
![提示](https://static.bdocx.com/images/bang_tan.gif)